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web2.0をハードな目線で捉え直す

※いろいろ指摘されたので、最後尾に追加記述しました.


 皆様 こんにちは、半年振りにblogエントリー舞い戻りました.仕事の環境と立場が変わるということは、考え方だけでなく思い切りも変わってしまいますね.

 ネットの海から陸に上がった組織にいると 感覚は鈍ってくるんですが、ネットの世界にどっぷり浸かって、10年間信者を続けていた私なので そんな陸の上でも時々「これってどうなの?」とか聞かれちゃいます.
「web2.0について」だなんて流行に乗っているかのようで気が進まないのですが、その仕組みよりも、そもそも論に基づいて ハードな目線で捉え直したいと存じます.
 さてさて、皆様お付き合いよろしく.

 
 
 
 さて、web2.0だが、定義としてははっきりしたものがあるわけではなく、いろんな例が持ち出された概念的な説明に ここも あそこも なってるわけで、所謂 古い組織・考え方から見ると「なんじゃそりゃ」「結局googleのこと?」なんて感想を持たれてしまう.
 ただ、だらだらとネット生活を続けてきた人間からすると、数々の例を出されるだけで「そうそう!」と、響く.既にここから「認識が違う」、ということを念頭に置いて考えさせてもらう.


1)リテラシーのフィルター
 以下の式と流れをご覧頂きたい.

 Contents + 個人 = 楽しみ → Business

(私が勝手に作ったものだが)、基本的に最近のネットにおけるビジネス・サービスを見る限り 「コンテンツに重視し」、「個人という単位を重視し」たものは、「楽しみを産出し」、そしてそれがビジネスに繋がっていく・・・というような流れで説明されることが多いように感じる.これ関係のニュース・文章に普段から触れている人にとってはなんてことの無いキーワードを繋げ合わせただけである.
 ただ前述のように、この分野に浸かっていない人からすれば、「なんでそれがビジネスに繋がるんじゃ.どうせgoogleなんて広告商売だろ.コンテンツなんて、個人相手なんて、大した利益にならんじゃないか.」なんて言われてしまう.
 これは、既にこの分野に慣れ親しんだ人の「リテラシー」の差だろう、とよく感じる.ただ、そのリテラシーのフィルターがかかっているだけに、浸かっていない人たちには伝わらない表現しかできていないことも多い.


2)LongTailと需要対応
 前出のweb2.0の説明ページなどは、「~ができる」「~ができるようになった」「~という使い方」と言ったように現象を説明している.数々のweb2.0について書かれた記事やblogエントリーを覗いてみても、ほとんどが現象の説明(過去との差異)と感想、もしくはその影響について書かれているだけだ.
 ここでは、そもそも何の「ためになる」のか、ということを考えて捉え直すことにする.


 上記はおなじみのLongtailの図である.一つの新しい現象として例にとらせてもらう.
fig1.gif

 ここで見てもらいたいのが右の図で、言わずと知れた普通の正規分布図だ.人間の嗜好なんてさほど大きくその構成が変化するわけでも無いはずであり、そもそも商売で人のニーズの関係はこの正規分布図を使った方が多かったのだから、こちらをベースに話をさせてもらうと、図2以下では赤い部分が供給できる商品という設定にしている.

 図2は、手工業時代の「ひとつずつ手作り」という生産量に限界のある状況を映し出している.
fig2.gif

 図3になると、ほぼ現在の物理的商品が当てはまる大量生産時代の「低価格少品種大量」の状況である.はみ出した部分や、人々のニーズに満たない部分は我慢しろ、というラインナップになっている.そうは言えども、時代が進んで今は、生産管理・マーケティングの力で図4のようにかなり柔軟に対応しているはずだが.
fig3.giffig4.gif
fig5.gif


 そして、最後の図5がまさにLongtailを実践できた図となるだろう.オンデマンド・オーダーメードの時代、こんな風に多様なニーズに対応できるというのが理想であり、そして実現されていくのだろうと考えられる.GoogleのPersonalized PageやAmazonの販売数の少ないニッチ本対応はまさにこれだろう.

 Longtailにちなんで、80対20の法則を持ち出している例も多く見られるが、それも現象だけを見つめるのは実に商売的な観点に取り残されていると思う.80対20については、「上手く儲けられるところを掴もうぜ」的な発想で済ますこともできるが、Longtailは決して「へぇ、尻尾のほうでも儲けられるのね」で話を終わらしては意味の無い現象だと考えられる.(本当に尻尾の部分だけで見ても商売になっているところは そもそもの規模が無いと貢献して無い事実もあるようだし


3)web2.0はweb上だけで完結すべきではない
 こう考えて見ると、Longtail他、AdsensのPersonalize化も、WikiPediaやmixiやAmazonのリコメンドのようなユーザー参加も、そもそもは「人間の根源的欲求に応える動き」なのだと捉えることが出来る.そしてここで、IT化・ネット化というものがもたらした「分散的」で「コストの掛からない」という素晴らしさが成しえた結果が、オンデマンド・オーダーメードなサービスを提供できている現象だと捉え直すことも出来る.当たり間の話だ.ただ、当たり前の話は、結果的に人々が求めていたサービスにたどり着いているということを認識し直す必要がある.

 そう考えると、まだIT化・ネット化できていないサービス・商品は、ただ「よし共有できるスペースをホームページにつけよう」だとか「ネット上でオープンにしてみよう」だとか単純に乗り込むのではなく、「ニーズを満たすために(今満たせて無いニーズに)どう対応できるのか」から始めることが出来るだろう.それが、たまたまネットを使ったものであることもあるし(コスト的にもやはり素晴らしい技術である限り、可能性も確率も大きいのだろう)、そうでない対応で成されることかもしれない.
 web2.0が、web上での新しい動きで、これまで成しえなかった人々のニーズに応えることが出来たという結果論を、web上だけの話にで完結させるのはまずい.それでは先ほど書いたように「へー、じゃぁうちも企業のページでSNS始めてみよう!」という短絡的な発想か、「ウェブ上の話でうちの商品の儲けには繋がらないよね」で終わってしまう.

 web2.0が何を人々にもたらしたのか を考えた時に、IT・ネットの技術の素晴らしさを感じつつも、視野を狭めてはいけない.web2.0はごく自然な産業発展の現象の一つであり、「製品・サービスの需要と供給の関係の革新」だ.
 儲かる、儲からない ではなく、自然な人間の欲求に対応するために 採算が合うようにするにはどうしたらいいか、を考えて実行することがweb2.0の本質だと思う.


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 今日書いたエントリーはいろいろ資料を調べるのに時間をかけたので、それと比較すると一昨日のエントリーは 読み返しても、稚拙な感じがする...
 しかも、ちょうど池田さん抽象度高くweb2.0を表現しているので、こりゃー私の考えなんてなんて感情的な門だろうと、ちょっと後悔.

 ただ、これまでに指摘された点を補足するとすれば、私の述べる「人間の根源的な欲求」とは物理的・生理的なものだけではなく、もっと体験的・感動的なものも含めた「欲求」に応えるという意味で使っている.(そういう意味ではマズローの欲求段階説で言うと 根源的欲求は最下位の生理的欲求のみが定義されるので、言葉としては合っていない.私の記述では、マーケティング的なニーズ喚起を高度な欲求とし、もっと人間本来の内側に存在する欲求を根源的な欲求とさせてもらっている.) 例えば、ユーザー同士でコミュニケーションを取れるという一現象も、それはそもそも「人は一人で居るよりも 会話したいし、知り合いを作りたいと思えるだろう」という一般的な理想を達成しているという意味で、欲求に応えていると捉えている.
 池田さんの書くように中抜き現象が、現実では全て取って代わられなかったっことも、人間の本質的な理想に「やっぱり人に聞かないと」とか「人と対面した方が信頼できる」とかいう感情的な側面と、「自分ひとりよりも冷静に正解を選べる」という確率的な判断など 原理的に人間が持っている考え方にのっとったものだと捉えることが出来る.(逆説的に、効率という軸で人間の欲求を考えると、中抜きの方が良い と思う人間ももちろん存在するから、どちらか一方に駆逐されることは無いだろう.)
 もう一つ例を出すとすれば、ワープロ・コンピューターができた時に 紙の使用量が大きく減るだろうと予測されていたにも拘らず、実際は逆にプリントアウトなどで紙の使用量が増加した という現象(ワーマン(2000)「それは情報ではない」に書かれている)も、似たようなものだ.数字の上での回答よりも、もっと本質的な解に人間は従ってしまう.
 やはり最後は、人間の本質的な行動・気持ちに応えられるか というのがビジネスの本質だと考える.

 しかし、池田さんの話は ネット上だけでなくてもちゃんと当てはまる.面白い.勉強不足過ぎて、そういう考え方でネットの仕組が成り立っていることが理解できていれば、私ももっと感情的ではない話が書けていたかも.
 やはりこの業界は、技術的・構成的に学ぶことで得ることは多そうだ.普通に 暗号化の進化や、信号の処理の仕方を見ているだけで、「お、これって 一レイヤー抽象的に昇華させれば 人間社会行動に応用できるじゃん」ってのが多すぎる.大学に再入学してよかった.もうちょっと頑張ろう.


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